2011年6月20日月曜日

柳井正/ユニクロ⑤ 柳井正の希望を持とう

2010年4月から朝日新聞の土曜版に連載されていたコラムをベースに書かれた新書版。
東日本大震災直後ということもあり、柳井氏が若きビジネスマンに向け「希望を持って
生きてゆく」ことの大切さを熱く語っている。

といっても、中身はこれまでの柳井氏の著書に記されている「原理原則」を若い人向けに
解説した体裁で、取り立てて目新しいことが書かれている訳ではない。
目新しくないからといって、重要ではないという意味ではない。
柳井氏はいつでも、基本に忠実な革新者なのだ。
もちろん、”旬”なポイントはいくつか存在する。
第2章、第5章ではここ数年のユニクロの基本戦略でもある「国際化」を熱く語られているし
第4章の「基礎的仕事力身に着け方」で指摘されている「現場」重視の姿勢と「人脈」に関
する意見は、これまでも何度も語られているが、都度ユニクロの”旬”を感じる卓見である。

ところで、この本にはとても重要な一文が含まれている。
小島健輔氏の著書を意識された訳ではないのだろうが、ユニクロがファストファッション
代表のように扱われる風潮に対し、第3章では「ユニクロはファストファッションではない!」
と、ユニクロの物作りの根本思想を熱く語っておられる部分だ。

ファストファッション(ZARA,H&M,フォーエバー21)は流行という情報を売っているのであり、
いかに早く流行の服を生産し、販売するかを最重視している。
これに対しユニクロは、これらブランドの十分一以下のアイテム数で、一点当たり数百万
から1000万に達する数量を生産、販売している。
世界中の人が欲しがる、品質に責任を持った商品でないと1000万点売ることはできない。


詳しくは本書を読んで頂けれ良いが、柳井氏の哲学が、ユニクロのプライドが込められた
一文になっていると感じた。